倉渕ダムの実施計画調査が始まったのは1984年のことでした。当初の総事業費は275億円と算定されていましたが、2004年の公共事業再評価委員では400億円とずいぶんと増えています。 群馬県でまとめられている「倉渕ダム検証報告書」によれば、当初の目的は烏川下流域の治水と高崎市への水の供給でしたが、その後、水需要の見積もりが少なくなり、高崎市は利根川本流からの水を利用することが可能となりました。そのため、目的が治水対策のみとなり、費用対効果が減少したとし、ダム計画を中止して、河川改修で対応する方向になったとされています。 この間、このダム計画をめぐっては、反対する市民運動が高まりました。この経緯については「八ッ場ダムと倉渕ダム」(相川俊英・緑風出版 2020年)に詳しく書かれています。この市民活動はダム計画の中止に大きく影響したはずです。 そして2003年、当時の群馬県知事であった小寺弘之氏より「当面の間、本体工事への着工を見合わせる」との答弁があり、事業は凍結され、2010年、群馬県公共事業再評価委員において事業中止が決定されました。 中止から16年後の2026年近年の気候変動を理由に国土交通省関東地方整備局は「利根川・江戸川河川整備計画」を変更し、目安となる利根川中流域にある八斗島(群馬県伊勢崎市)での洪水調節水量を3000m³/秒から4900m³/秒に増やしました。この数値目標を達成するために、八斗島よりも上流で、現存のダムの改修、新規ダムの建設、中止されたダムの再計画、調整池の整備などいろいろな方策を探っています。それは何か一つを対策としてとるのではなく、いくつかを組み合わせて、目標数値を達成しようとするものです。今のところ、新規ダムを計画する方向性は薄いようですが、この流域で中止となった6つのダム計画のうちのどれかを復活させようという考え方は現実味を帯びています。とくに中止が決定される前に事業が進行していた倉渕ダムと戸倉ダムはその有力候補となっているようです。 ダム計画再開の候補となっているダムは以下のものです。 ・川古ダム(群馬県みなかみ町) ・倉渕ダム(群馬県高崎市) ・増田川ダム(群馬県安中市) ・戸倉ダム(群馬県片品村) ・平川ダム(群馬県沼田市) ・栗原川ダム(群馬県沼田市) いずれも自然豊かな環境にあるところです。 ダムを作るのにはいつも豊かな自然の犠牲が伴います。一度ダムが作られてしまえば、そこに昔から長い時間かけて作られてきた生態系はあっという間に崩壊してしまいます。ダム工事のあとにできるのは、それまであった生態系とは全く違う人工的なニオイの漂う都会的な生態系かもしれません。そこにイヌワシやクマタカが含まれているようにはあまり思えません。 ダムによらない治水対策はできないものなのでしょうか。 |