高崎市議会 6月定例会  2026.6.15.

宮原田綾香議員(たかさき未来)の一般質問

宮原田綾香議員
 通告に従い、今回は倉渕ダム建設計画について質問します。すでに同じテーマで質問した議員がおりますので、重複する箇所があろうかと思いますが、ご容赦ください。
 倉渕ダムは42年前に県によって計画され、23年前に凍結、その後中止となり、昨年度、国により再検討の対象となりました。しかしこのダムは建設が中止された全国でも珍しいダムです。そして烏川は主要河川の中で本流にダムを持たない大変貴重な川です。今回の事業主体は国になるようですが、そもそも倉渕ダムを作ることで本市および下流域には本当にメリットがあるのか、今回の質問では議員や執行部の皆様、そして市民の皆様とこの計画にどのような効果があるのかについて、情報を共有するきっかけとしたいと思っています。今回とくに、治水面に絞って議論したいと思います。それでは早速質問に移ります。
 基本的なことなので確認をさせてください。まず倉渕ダムの概要および目的、これまでの経緯と中止になった理由についてお答えください。また2003年の検証時、ダムに頼らない治水への転換としてどのような代替案が示されて中止に至ったのかについてもお答えください。

建設部長
 宮原田綾香議員の1点目、倉渕ダム建設計画についてのご質問にお答えいたします。伊藤議員の質問でもお答えしたとおり、倉渕ダムは烏川沿線の旧倉渕村、旧榛名町、旧高崎市の治水と高崎市の水道用水確保や安定供給など利水を目的とした多目的ダムとして群馬県により建設が計画されたものでございます。県は昭和59年に実施計画調査を開始し、平成2年から建設に着手しましたが、平成15年12月に当時の県知事が当面の間、本体工事ダム工事への着手を見合わせる旨を表明いたしました。その際の理由としては、当時の県議会への知事の答弁では、財政状況やカスリーン台風以来の大規模な河川の洪水被害がないこと、水需要が伸びていないことなどを総合的に勘案したものと述べられているところでございます。なお、ダムの中止に伴った代替対策として本市の利水については八木沢ダムを水源とする水利権を取得できることになったものでございます。また、治水対策につきましては、県が平成27年11月、烏川圏域河川整備計画を変更したと県からお聞きしております。以上でございます。

宮原田議員
 利水については八木沢ダムから水利権を取得することになり、ダムの目的の一つが失われたことで費用対効果が1を下回り、県が中止を決定したという経緯だったかと思います。治水についても大きな効果がなかったことが証明されています。当時、倉渕ダム再評価委員会で河川工学の大学教授や専門家が治水効果について検討した資料があります。これによると群馬県が公表したダムの効果には河川改修の効果も同時に含んでいる数値だったため、あらためてダムのみの効果を計算し直すと、その費用対効果は当初県が公表していた1を上回るどころか、0.13にしかならないとのことでした。これは治水についても倉渕ダムは効果が無いということを表わした数値です。倉渕ダムのピンポイントの気象データは今回手に入りませんでしたが、流域に含まれる榛名山の斜面など、気象庁の出している周辺の降雨データを見ると、当初の建設計画に書かれていた年間降水量とほぼ変わらないか、少し増えているくらいなので、おそらく治水効果についても大きな変化は見られないと個人的には推察しています。そしていま答弁していただいたとおり、群馬県は烏川の整備計画を変更し、堤防を作るなど洪水に耐えうる工事を現在まで行ってきています。それではなぜ、そんなダムが中止から約23年もたった現在、建設が再検討されることになったのか、その経緯と理由について教えてください。

建設部長
 再度の質問にお答えします。令和元年の東日本台風などの激甚な水害や近年の気候変動に伴う降雨量の増加に対応するため、国においては令和7年3月、利根川江戸川河川整備計画を変更いたしました。この計画において、上流部における洪水調節機能の強化については既設ダムを最大限活用した事前放流や、操作方法の見直しなどを行った上で、さらに洪水調節の増強が必要な場合には既設ダムの放流能力の増強、堤体のかさ上げ、新設ダムなどに関する調査・検討を行うこととしており、これを受け、令和7年度より利根川上流部における治水機能増強検討調査がすすまれております。この調査においては経済性、実現性からも利根川と烏川の合流地点である八斗島上流域で対応するのが優位であることの確認が行われ、対策メニューのうち、中止ダム予定地の活用について現地調査などが予定されているとお聞きしております。本市といたしましては今後も国の調査検討状況を注視してまいりたいと考えております。以上でございます。

宮原田議員
 今回計画されている倉渕ダムの目的は、利根川の下流域を洪水から守るため、というふうに書いてあるかと思います。ダムを作るというと市民の皆様も気候変動によってダムの渇水などがニュースでとりあげられているのを見て、水が必要だからと思う方もいらっしゃるかもしれませんが、今回の倉渕ダムは治水が目的ですので、飲み水や農業用水には今のところ関係がないかと思われます。また、近年のダムの傾向としても利水を伴う新設の多目的ダムはほとんどなく、治水目的が主流です。さきほど御説明いただいた治水機能増強検討調査の中で、倉渕ダムが何に使われるかというと単体では効果が小さいので、下久保ダムとセットで使う補助的な役割であることが読み取れます。では、治水機能増強検討調査の資料に書いてある容量振り替えとは具体的にどのような計画内容なのか教えていただけますか。また、仮に倉渕ダムが建設された場合、洪水を調節する量である流量低減効果は利根川水系全体の治水計画からみて何パーセントに該当し、利根川水系全体に対してどのような影響を与えるものと考えられるか、国の資料を参考に教えてください。

建設部長
 再度の御質問にお答えいたします。近年の激甚化、頻発化する水害や将来の気候変動による気象災害のリスクに備えるため、国において治水機能増強検討調査がすすめられております。この検討においては既存施設の活用や過去に中止されたダム予定地の活用について、他のダムとともに調査検討が始められた段階であるとお聞きをしております。本市といたしましてはご指摘の流量低減効果を含め、今後も国の調査検討の動向を注視していきたいと考えております。以上でございます。

宮原田議員
 数値についてお答えはありませんでしたが、利根川江戸川河川整備計画の有識者会議の資料を見ると、倉渕ダムの記述があり、流量低減効果は毎秒50から120立法メートル、つまりそん。工期は10年間、建設費約500億円というふうに書いてあります。今回変更された整備計画では、河川改修で毎秒16300トン、ダム等上流で毎秒4900トンを調整する想定になっています。たとえばダムの持ち分の中でみれば、倉渕ダムの持ち分は約1~2.4%という計算になります。整備基本方針の数字に照らし合わせると、毎秒8300トンをダム等で調節する必要があるのでその割合はもっと小さくなり、約0.6~1.4%くらいでしょうか。利根川水系全体からみると、26000立米を調整しなければならないので、ほぼこの50~120というのは効果があるのかどうか疑問ですが、少なくとも言えるのは非常に効果が限定的ということは言えるかというふうに思います。倉渕ダムと下久保ダムの容量振替についての効果は、いくつかのパターンが書いてあっても明確な数値がしるされていないようですので、今後、市からもぜひ国に問い合わせをしていただければと、お願いしたいと思います。
 少し日本の治水計画そのものに触れてみたいと思います。一部の河川工学の研究者から見ると日本のダムは海外の事情とは違って、川が急流なため、コントロールが難しいといわれています。その中でもいくつもの川が入り乱れる利根川水系の治水は世界的にみてももっとも難易度の高い計画であるという学者もいます。首都圏にかかわる場所なので最重要水系として整備されてきましたし、すべての河川計画はこの利根川水系でおきる問題にどう対応するかを基本として作られ、他の地域にも応用されてきました。我が市にダムを作れば下流域が救われるとの考えが思い浮かぶと思います。私もそうだと思っていました。しかしながら利根川水系の整備計画を見ると、計画自体に無理があり、そもそも完成する日の来ない計画といってもおそらく言い過ぎではありません。この計画は伊勢崎市の八斗島地点を基準点とし、1980年に目標洪水を毎秒2200と定めてから、2006年にはダムで毎秒5500トン、河川改修で16500トンに変更されましたが、今回のこの国の改訂で毎秒2600トンに増強し、ダムでの調節量も8300と大幅に増えました。すでに昔たてた1980年自体の計画でさえ実行ができていないのに、目標値を変えてきたというのが国の計画になっています。2020年に八ッ場ダムが68年の歳月の末、完成しましたが、今ある7つのダムの洪水調節効果は毎秒1600トンで、これまでも3900足りないといわれてきたのに、このままだと6700も足りません。この計画の中で倉渕ダム単独の効果は毎秒50~120立米です。これは効果があるといえるのか、国の最重要水系といわれながらも完成形が見えてない計画に高崎市の土地を水没させる意味があるのか、よく考えた方がいいのではないかというふうに私は思っています。一方で下流域にはメリットが薄くても高崎市には効果があるのではないかと気になる方もいると思います。現在の視点からみて高崎市における倉渕ダムの費用対効果をどう評価しているか、これは本市にかかわることなので市の見解をぜひおうかがいできればと思います。

建設部長
 再度のご質問にお答えいたします。本市の洪水対策に及ぼす具体的な影響などについては現在国において治水機能増強検討調査がはじめられたところであり、本市の洪水対策に及ぼす具体的な影響などについては、現在、国において治水機能増強調査が始められたところであり、計画の内容や妥当性、必要性等についてはまだ示されておりませんので、本市といたしましてはご指摘の費用対効果も含め国の検討の動向を注視してまいりたいと考えております。以上でございます。

宮原田議員
 まだちょっと詳細のことが出ていないという話でしたが、今回、国の出している資料には倉渕ダムの大きさなど、かつて県が作った計画を使用しているようなので2002年に県が公表した確率別想定氾濫面積という一覧表について触れたいと思います。これ、配布はできていませんが、議員の皆様には議運を通してその資料が見られるようになっているかと思います。口頭で説明しますが、高崎市内の6つのポイントで、雨が降ったらどのくらい浸水するかを示した表です。20年に一度、30、50、80、100年に一度と、それぞれの氾濫面瀬について記されています。その中でも、たとえばJR信越本線上流(右岸)というポイントがあります。豊岡のあたりですが、ここは倉渕ダムが計画された時点では堤防がありませんでした。20年に一度の雨が降った時に浸水する面積は52.8ヘクタール。ただこの場所は堤防はないけれども鉄道の土手が堤防と同じような役割をはたしていましたので、もともと52.8ヘクタールにはおよばないというような議論もかつてありました。20年に一度の雨が降った時の他の氾濫面積は0ヘクタールだったので、この場所がかつての治水効果の費用対効果を押し上げていた要因の一つです。そこでうかがいます。ダム中止以降、市内ですすめられてきた堤防整備や川の掘削等の進捗状況、および事業効果どのようなものですか。とくにJR信越線上流付近の堤防は完成していますか。これらの整備によって、当時の想定からどの程度氾濫リスクが低減していると考えられるか教えてください。

建設部
 再度のご質問にお答えいたします。群馬県による烏川の治水対策の進捗状況につきましては、群馬県が平成27年11月に策定した烏川圏域河川整備計画にもとづく河川改修6地区のうち、JR信越線上流付近、上豊岡地区になりますが、この堤防整備は令和3年度に完了しており、その他5地区については現在用地買収などをすすめているところであるとうかがっております。また、県に確認したところ、氾濫リスクの低減効果につきましては、JR信越線上流付近においては堤防整備が完了したことから、河道の流下能力が向上し、洪水時の氾濫リスクの低減が図られているとお聞きしております。以上でございます。

宮原田議員
 ご答弁いただきありがとうございます。群馬県が倉渕ダムを中止してから、堤防を完成させたことで氾濫リスクが低減しているとの答弁でした。かつて倉渕ダムの中止を決断した小寺知事は、ダムが必要かどうか判断するために、この地点を含めすべての氾濫地域の整備状況を自分の目で確認に行っているそうです。堤防整備がすすんだことで、高崎市内における倉渕の治水効果は20年前よりももっと小さくなっていることが推測できます。扱っているデータが2002年と古いと思うかもしれません。私も高崎市内の氾濫危険個所が現在はどのくらい数値が改善されたのか知りたいので、新たな数値を計算し直していただくことをぜひ県に要望していただきたいと思います。また今回倉渕ダムが再び俎上に上がったのは国が温暖化の影響を考慮した新たな治水計画を出したからです。それは気温が2度上昇し、降雨量が約1.1倍、流量が1.2倍になるというシナリオを前提にしています。でも県が倉渕ダムを計画した当時に仮定した烏川の流量は毎秒2800トン、現在は2000トンですので、1.4倍の流量で計算をしています。つまり幸いなことに、先に過大な洪水を予測してつくられた計画なので市内においては昔の検証結果をあてはめても参考になる点があると考えられます。いやいや、でも20年に一度、30年に一度起こる洪水に対応するような安全度じゃ心配だというような方もいらっしゃるかもしれません。50年に一度、100年に一度じゃないと、という考え方ももちろんあると思います。先ほどの氾濫面積を見ると、ダムのある場合とない場合の氾濫面積が書いてありますが、氾濫面積が変わらない地点がほとんどです。いくつかは洪水で漏れる箇所もありますが、それらは県の烏川河川整備計画で対象地区となっている場所だと思われます。ダムは万能ではありません。想定以上の雨が降った場合、緊急放流が必要で、ただダムの湖の中を洪水が流れていくだけになります。場合によっては緊急放流による危険が増すこともあります。先週の一般質問の答弁で副市長は洪水から市民を守ることは自治体の仕事だとおっしゃいました。私もそう思っています。これからの気候変動に対応するためには、人口減少が続くことを考えて、水害にあいやすい場所から、人は住まないようにする、撤退する政策、床下浸水はあるかもしれないけども、床上浸水は発生しないように堤防を強化する政策、そうした人の命を最優先に考えた計画へとシフトしていくことが中止されたダムを持つ稀有な自治体としては推進していくべき治水と防災のあり方なのではないかというふうに考えていますが、市のお考えはいかかでしょうか。

建設部長
 再度のご質問にお答えいたします。本市といたしましては、気候変動に伴い、従来の計画を上回る豪雨が頻発することを前提とした河川整備計画にもとづき、河川管理者において対策が講じられるものと認識しており、地域の実情を踏まえ、必要な施策については国や県に要望したいと考えております。一方、ソフト対策につきましては市の地域防災計画にもとづき、適切に運用を行っているところであり、関係部局とも連携しながら、市民の迅速な避難につながるマイタイムラインの作成啓発などにも取り組んでおります。今後についても人命を最優先に、不断の見直しを行い、市民の安心安全の確保に努めてまいりたいと考えております。以上でございます。

宮原田議員
 ここまでの質問をまとめると、そもそもの国の計画は終わりの見えない計画であること。たとえ倉渕ダムができたとしても、下流域に及ぼす効果は非常に限定的と予想されること。高崎市内においては、県がこれからもきちんと整備を継続していけば治水安全度は増す計画となっていること。合わせてダムがあってもなくても氾濫面積が変わらない地点が高崎市内に多数あること。これらを総合的にふまえると、我市が誇る倉渕の雄大な自然を失ってまで建設する価値のあるダムなのか、というふうに私は大きな疑問を感じています。高崎市のトップとして現時点でどう考えていらっしゃるか、市長のお考えをお聞かせいただければと思います。

建設部長
 再度のご質問にお答えいたします。この検討においては既存施設の活用や過去に中止されたダム予定地の活用について他のダムとともに調査検討が始められた段階であると国から聞いております。本市といたしましては現時点で何らかの予断を持って評価を行う状況にはないと考えており、今後も国の調査検討の動向を注視しながら適切に対応してまいりたいと考えております。以上でございます。

宮原田議員
 市長も同じ考えということでよろしいでしょうか。

富岡賢治市長
 ?

宮原田議員
 私、学生時代にダムに出会ったことがきっかけでこの世界にはいっているんですけれども、若かったからか、これだけお金と時間を使って作られる計画が終わりの見えていない計画だったりするということを聞いて、すごくショックを受けた覚えがあります。巨額のお金をつぎ込まれて、四半世紀かけて作ってもいまだに首都圏は水びだしのニュースが絶えません。また、高崎の話をすれば、現地で農業をやっている方は水と土が命ですし、心配されています。倉渕の自然がいいからと都内から引っ越してきた方、川と環境がいいからと子連れで移住してきた方、けっこうそういう方々にもお会いしました。今さらなんで、というのが皆さんの気持ちだと思っています。倉渕ダムがなくても困っているという人に私は会ったことがありません。国が、県が、と言わず、倉渕のもつ固有の自然環境は高崎市の財産です。ここにダムをつくるための調査を受け入れることに対しては、もう少し議論が必要だったのではないかというふうに思っています。選挙で選ばれる私たちの仕事はずっと後になってから、後世によってその判断が正しかったかどうか、人に評価されるものと思っています。ぜひ、市長からお答えいただけませんでしたけども、倉渕の一部の土地を失うことに対して、冷静な御判断を要望してこの質問を終わりたいと思います。水質や自然環境の影響については今後取り上げていきたいと思います。